退職金は確定申告するとお得!

退職金は確定申告するとお得!

年の途中で退職し再就職をしなかった給与所得者(サラリーマンやパート・アルバイトなど)の場合、確定申告をすると、給与天引きされていた所得税が還付される可能性があることは広く知られています。

では退職金にかかる所得税ではどうでしょうか?

チワワン

パパさん、退職金を確定申告する人ってあまりいないそうだけど。
そうだね。退職手続き時に源泉徴収されれば、それで完了だと思ってしまうからね。でも、この記事のように、ある条件では確定申告で得する人もいるんだよ。

テリオス

退職金を確定申告して得する人とは?

退職金は分離課税です。

一般に退職金を受け取る時点で「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、それをもとに所得税と住民税、平成25年からは復興特別所得税が計算されて源泉徴収されます。

こちらの記事で、モデルケースにおいて「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合としない場合の所得税・住民税額を解説しています。

退職日前後に行う手続き

これで税金関係は終了しますので確定申告は不要となります。

しかし「不要」ということは「所得税・住民税と復興特別所得税は頂いているので確定申告しなくてもいいですよ」ということであり、「してはいけません」ではありません。

退職金を確定申告して得する(払いすぎた所得税が戻ってくる)人とは、退職した年の(退職金を含めない)収入が少ない人です。

このような人は、配偶者控除や基礎控除などの所得控除が給与所得から引ききれずに残っているため、その分を退職所得から引くことが出来ます。

そして引いた分だけ税金が安くなり、退職金から天引きされた税金(のうち所得税)が還付され戻ってくるという仕組みです。

なお、住民税については、退職金からの天引き(特別徴収)によって課税が完結することになっていますので、残念ながら還付はありません。

それでは実際に、退職金の確定申告作業を行いながら解説していきます。

作業にあたっては、同時期に退職した知人からデータを頂戴したので、これを基に解説していきます。

テリオス

確定申告作業における(知人の)前提条件

  • 勤続年数は27年11カ月(退職所得控除の勤続年数は繰り上げになるので28年)
  • 「退職所得の受給に関する申告書」は退職時(2017年1月)に提出済み
  • 配偶者控除内でのパート勤務配偶者あり
  • 1月に給与所得があった以外は他に所得無し

申告書はB様式と分離課税用を用意

確定申告書にはAとBの2種類がありますが、退職金の確定申告には、申告書B様式と申告書第三表(分離課税用)を使います。

手順①:申告書B第二表に記入

退職金の確定申告書作成に必要な書類は、次のようなものがあります。

  • 給与や退職金の源泉徴収票
  • 生命保険料や地震保険料などの控除証明書
  • 社会保険料の納付書

中でも、退職後に自分で納めた社会保険料(任意継続被保料あるいは国民健康保険に加入して介護保険料と併せて納付した保険料や、夫婦それぞれの国民年金保険料など)は忘れがちなので注意しましょう。

源泉徴収税額

各種源泉徴収票をもとに、【所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)】に記載し、源泉徴収税額の合計額を計算して(44)に記入します。

【所得の種類】
 給与所得は「給与」、退職金は「退職」と記入。
【支払者の氏名・名称】
 支払先の会社名を記入。
【収入金額】
 源泉徴収票の「支払金額」を記入。
【所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額】
 源泉徴収票の「源泉徴収税額」を記入。

そして、この合計額を申告書B第一表の(44)に転記します。

この(44)の金額が、戻って来る所得税の上限値になります。

次に、給与所得分の収入金額を申告書B第一表の(カ)に、退職所得分を申告書第三表(分離課税用)の(ニ)と右下の【退職所得に関する事項】の収入金額に転記します。ついでにその左横の所得の生ずる場所(退職した会社名)も記入します。

社会保険料控除

【所得から差し引かれる金額に関する事項(12)社会保険料控除】に、給与より支払った社会保険料と退職後に支払った健康保険料や介護保険料、国民年金保険料を記入します。

【国民年金】
 日本年金機構から送られてくる社会保険料控除証明書を参考に記入。
【健康保険・介護保険】
 健康保険・介護保険を支払った場合は、領収書で合計額を計算して記入。
【源泉徴収票のとおり】
 源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄に金額の記載があれば、合計し記入。

そして、この合計額を申告書B第一表の(12)に転記します。

生命保険料・地震保険料控除

【所得から差し引かれる金額に関する事項(14)生命保険料控除および(15)地震保険料控除】に、各種控除証明書を参考に支払った保険料を記入します。

これらをもとに、生命保険料控除や地震保険料控除を算出し、申告書B第一表の(14)および(15)に転記します。

算出にあたっては、こちらの記事を参考にしてください。

生命保険料控除の書き方と計算方法(作成中)
地震保険料控除の書き方と計算方法(作成中)

配偶者(特別)控除

【所得から差し引かれる金額に関する事項(21)~(22)配偶者(特別)控除・扶養控除】に必要事項を記入します。

これらをもとに、控除額を算出し、申告書B第一表の(21)~(22)に転記します。

算出にあたっては、こちらの記事を参考にしてください。

配偶者(特別)控除の書き方と計算方法<作成中>

手順②:申告書B第一表に記入(前編)

基礎控除

全員共通で、(24)に38万円を記入します。

控除額の合計

(10)から(24)までを合計して、(25)に記入します。

給与所得控除

給与所得控除額を計算し、(6)に記入します。

算出にあたっては、こちらの記事を参考にしてください。

給与所得控除額の計算方法<作成中>

合計額として(9)も記入します。

ここで申告書B第一表に記入するのはひと休みです。

手順③:申告書第三表(分離課税用)に記入

(69)に退職所得を記入するため、以下の計算を行っていきます。

退職所得=(退職金-退職所得控除額)✕0.5なので、まずは退職所得控除額を求めます。

退職所得控除額

退職所得控除は、下表のように、勤続年数によって計算式が変わります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円✕勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)
20年超 800万円+70万円✕(勤続年数-20年)

ここでは、勤続年数を28年とします。

退職所得控除額=800万円+70万円✕(28年-20年)=1360万円

ここで、右下の【退職所得に関する事項】に、求めた退職所得控除額を記入します。

退職所得額

計算式
退職所得額=(退職金-退職所得控除額)✕0.5

計算式から退職所得額を求め、(69)に記入します。

退職所得額=(23,486,816円-1360万円)✕0.5=4,943,000円(千円未満切り捨て)

課税所得の計算

(9)に、申告書B第一表の(9)を転記します。

(25)に、申告書B第一表の(25)を転記します。

(70)に、(9)-(25)を計算して転記します。

実際に計算すると、0円-1,746,456円=-1,746,456円 となりますが、マイナスの場合は0円と記入します。

しかし、このマイナスには意味があります。

つまり、所得控除分が丸々残っている状態だからです。

この残っている所得控除分を、退職所得から差し引くことができます。

テリオス

(70)がプラスの場合は、(77)に(69)を転記します。

しかしマイナスの場合は、(69)から(70)差し引いた分を(77)に記載します。

つまり、4,943,000円-1,746,456円=3,196,000円(千円未満切り捨て)となり、これを(77)に記載します。

これが課税所得となります。

所得税額の計算

(78)と(85)に所得税額をそれぞれ計算して記入します。

所得税は「超過累進課税+復興特別所得税」になりますが、(78)と(85)には超過累進課税額を記入します。

超過累進課税の一覧は以下の表を参照ください。

課税所得金額 税率 控除額
0.1万円から194.9万円まで 5% 0万円
195.0万円から329.9万円まで 10% 9.75万円
330.0万円から694.9万円まで 20% 42.75万円
695.0万円から899.9万円まで 23% 63.6万円
900.0万円から1799.9万円まで 33% 153.6万円
1800.0万円から3999.9万円まで 40% 279.6万円
4000.0万円以上 45% 479.6万円

超過累進課税=課税所得金額✕税率-控除額

(78)=0円✕5%-0万円=0円

(85)=3,196,000円✕10%-9.75万円=222,100円

(78)と(85)の合計額を(86)に記入し、これを申告書B第一表(27)に転記します。

手順④:申告書B第一表に記入(後編)

最終段階です。

(27)を(38)に転記します。

(40)に、(38) ― (39)の金額を記入します。

(41)を計算して記入します。

(42)に(40)+(41)の金額を記入します。

(45)に(42)-(44)の金額を記入します。

マイナスの場合、その金額が還付されるので、それを(48)に記入します。

これで計算は終わり。あとは「還付される税金の受取場所」欄に金融機関や口座など必要な情報を記入して、確定申告書の作成は完了です。

各申告書の完成形

今までの内容を記載すると、下のようになります。

申告書B第一表

申告書B第二表

申告書(分離課税用)第三表

まとめ

先日、知人から「申告通り、413,317円の還付金があったよ」との連絡をもらいました。

その数日後、『国税還付金振込通知書』が届いたとのことだったので、その写しを掲載しておきます。

2月15日に税務署へ郵送で提出し、4月12日に振込があったので、約2ケ月の期間を要したことになります。

本記事のケースのように、払いすぎた所得税が戻ってくる可能性がある人は、ぜひ退職金の確定申告にチャレンジしてみてはいかがでしょうか!